2月2日 木曜日
(「単なる水」こそ、永遠なるサプリ)
午前6時50分 靴 音 の 響 き
勝俣部長の住む集合住宅は(360戸)、築40年を経過した、相当に古い建物である。
昨年「3.11」の大震災に、よくもまあ、耐えたものだと、竹中工務店の技術に感心した。
古いだけに、セキュリテーは、人同士の触れ合い1本である。
ここに来て、やたらと、触れ合いとか、絆とか言い出しているが、我が住まいに関しては、そんな事は、とっくの昔に完成している。
先端技術とやらが、護り固めてくれない、有難い結果である。
私は、13階の、端から2番目の部屋に住んでいる。
エレベーターホールは、端から4番目の部屋の前方にある。
従って、一番端に住むご家族は(ご家族全部が旧知の仲)、我が家の、玄関ドア前を通らなければ、エレベーターには、乗れない。
もう、何年になるのだろうか、・・・・。
決まって朝6時50分、一種の、けたたましい靴音が、通り過ぎて行く。
ちょうど、その時間帯の私は、顔などを洗うため、洗面所に居る。
洗面所は、玄関のドア方向にある。
だから、けたたましい靴音が、毎朝毎朝、鉄扉を通して聞こえて来る。
かなり前の事である、・・・・、誰だろうかと思い、そっと、ドアを明けた事がある。
隣の、お嬢さんであった。
これも、かなり前に知ったのだが、・・・・けたたましい靴音は、彼女の歩き片の問題では無かった。
一つは、ハイヒールの踵(カカト)が発する、あの独特の響き。
一つは、・・・・こちらの方が、けたたましさを、増幅させているのだが、駅まで乗るバスの時刻の寸前に、家を出るから、遅れまいと、急いで走るための靴音である。
お陰様で私は、時計を見る事無く、朝の貴重な時間を知る事が出来る。
多分、セイコー社の時計でも、シチズン社の時計でも、とても適わない精確度を持って、彼女は出勤に就く。
後5分早く、・・・・つまりは、6時45分に靴音を鳴らせば、本人が楽であろうにと思うが、・・・・人間って、それが出来ない、・・・・そんなところが面白いし、闊達に生きてる証拠である。
風邪が大流行だ、・・・・靴音が、一瞬たりとも、途切れない事を祈りたい・・・・。
人間の触れ合いって、いろいろな形態が有っていいのだ、・・・・。
つづく。